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JT編集長より島唄の第一人者、知名定男さんの現役引退を知らされ、はたして引退をお考えになるようなお年の方だったかしらと思い、プロフィールを見てみたら、1945年生まれとある。ということは、今年67歳、まだまだご活躍できるお年ではないか。師匠の登川誠仁氏は今年御年80で、ステージで踊り跳ね三線を弾き歌っておられるではないか。何より、多くのファンは引退などまったく望んでないのではないか。とはいえ、外野からは知ることのできない、健康上の問題などを抱えられていたのかもしれない、などと思いながら見つけた3月26日付の沖縄タイムスの記事によると、記事掲載の前日のコンサートのステージ上で引退宣言をされたとのこと、数年前より思うように声が出なくなってきたことが理由と書かれていた。実際その日のコンサートでも声が出ず、悔し涙をされたシーンもあったそうだ。歌手にとって声が出ないことは致命的だし、ファンの方たちに対して申し訳がたたない、という思いで悩まれていたのかもしれない。芸能活動55周年という節目のコンサートの場での発表だったそうで、知名さんの強い意志表示を窺えさせられた。
わたしの知っている知名定男さんといえば、歌手としてというよりどちらかというと、登川誠仁さんのお弟子さん、ネーネーズの生みの親、琉球フェスティバルのプロデューサー、といった側面で、そういえば、一時期TV上でもちょくちょくお見かけしたような、と記憶をたどれば、NHK教育テレビで三線の講師で出演しておられたのだった。あ、そういえば、あのとき三線に触ってみる良いチャンスだったのに、逃してしまった….。もう一度あの三線のレッスン番組を復活してもらえないだろうか、できることなら同じく知名さんが講師で。あれは、三線演奏の手ほどきを指南する番組だったけれど、知名さんの穏やかな語り口と、彼がつむぎだす三線の心地よい音色からは沖縄のゆるやかな空気が流れ、その雰囲気が好きで、せっかくだからこの機会に私自身も三線をつまびいてみるなどとその時は全く思いもせず、何かの音楽番組を見るのと同じ感覚でそのレッスン番組を見ていたのだった。
それと、わたしの個人的な体験を引っ張り出すと、念願かなって昨年初めて出かけた「琉球フェスティバル」、じつは歴史ある音楽イベントながら、20年間の休止期間を経て復活させた立役者が知名さんであることを最近偶然知ったのである。それはもう、理屈抜きでひたすら楽しい沖縄音楽のお祭りだし、きっと沖縄の地域のお祭りや家族の祝い事ってこんな盛り上がり方をするんだろうな、という雰囲気を200%味わえるイベントなのである。考えてみれば、日本各地、地方の音楽、芸能はいろいろあるけれど、一地方の音楽だけで大きなイベントができてしまうのは沖縄だけではないだろうか。しかも毎年、東京、大阪の2都市で開催、となると、裏で大汗かいてくださっているであろうスタッフのかたがたのご苦労は想像に難くない。何よりも知名さんをはじめとする主催者のかたがたの熱意があってこそ、毎年続けてこられるのだろう。
大阪生まれの知名さんが沖縄に渡ったときは、まだパスポートが必要な時代だった。どういう事情か民謡歌手の父とともに“密航”し、登川誠仁氏の弟子になったのが10代前半。10代でデビューしたときには天才少年ともてはやされるも、その後島唄から離れていた時期もあったようだ。曲折を経て島唄に戻ってきたとき、東京にあこがれる若者たちの気をひき、沖縄に目を向けさせるため、島唄にレゲエやロックなどの要素を取り入れた曲を発表したりした。東京では沖縄音楽の知名度は無きに等しかった。地元の師匠たちからの反発はあったようだが、結果的に新しいエッセンスを加えた知名さんの音楽は、東京での沖縄音楽ブームの火付け役となり、ネーネーズのデビュー、琉球フェスティバルの開催とつながり、そしてお茶の間で普通に沖縄ポップスが聴ける今日に至る。
島唄の名人は沢山いるけれど、知名さんの尽力がなければ、おそらく沖縄の音楽が今日のように日本全国で市民権を得ることもなく、ごく狭い地域だけのローカル芸能のままだったかもしれない。日本各地で地域限定芸能が細々と引き継がれていることを思えば、それはそれでアリなのだと思うけれど、沖縄の外で生活する私たちが島唄を耳にする機会もごく限られていたかもしれない。
ところで、本当はわたしにはこの原稿をお引き受けする資格がないのだが、ご本人には失礼を承知で、知名さんの演奏をほとんど知らないでいた。数年前彼の師匠、登川誠仁氏の演奏に衝撃を受けて以来、誠仁氏から知名さんにつながっていったのだけれど、誠仁氏のお弟子さんのひとりという程度の知識しかなかった。そんなわけで、わたしの手元にあるアルバムで知名さんの演奏を聴けるのも、『登川誠仁&知名定男』(リスペクトレコード)の1枚だけである。レゲエやロックなど色々な要素を島唄に取り入れ、島唄の知名度向上に尽力した知名さんだが、わたしの手元にあるこのアルバムは三線と太鼓と唄の正統派島唄で、誠仁さんと知名さんおふたりのいぶし銀の歌声を交互に聴ける贅沢な1枚だ。で、次はやはりライブでしょう、と思いきや、時すでに遅し。ああ残念、本当に引退されてしまうのだろうか。きっと多くのファンももう一度ステージに上がることを望んでいると思う。とはいえ、思うように声が出ないことで長い間悩まれていたという。引退を決意されたのは演奏家としてのプライドもあったのかもしれない。でも、わがままなわたしは、ないものねだりを承知で、一度で良いから知名さんの演奏を間近で聴いてみたい。引退宣言の撤回歓迎、願わくばいつかまたステージに戻ってきてください。その日を気長に待ちつつ、『登川誠仁&知名定男』をもっともっとじっくり聴こうと思います。
* http://www.jazztokyo.com/best_cd_2011a/best_live_2011_local_02.html
* http://www.jazztokyo.com/kadentz/v13/v13.html
* http://www.jazztokyo.com/column/takatani/018.html
* http://www.jazztokyo.com/column/takatani/019.html
* http://www.jazztokyo.com/five/five819.htm
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#990『岡部源蔵/Okabe Family』(OAP)悠 雅彦/
#991『ティチアン・ヨースト・トリオ/さよならの記憶−ホルスト・ウェーバーへ捧ぐ』(Enja/MUZAK) 望月由美/
#992『Michael Bates | Samuel Blaser Quintet/One From None』(Fresh Sound)伏谷佳代/
#993『ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」&第10番 ヴァイオリン・ソナタ全集(第2集)』(EMIクラシックス)大木正純/
#994『Andrea Centazzo|坂田 明|藤原清登/Bridges』(Ictus Records)須藤伸義/
#995『Ben Wendel & Dan Tepfer/Small constructions』(Sunnyside)伏谷佳代/
#996『いそしぎ/明田川荘之』(メタ花巻アケタズディスク)望月由美/
#997『Dejan Terzic/Melanoia』(ENJA)伏谷佳代/
#998『ホット・コルネッツ/オール・オブ・ミー』(What's New)稲岡邦弥/
#999『マイルス・デイヴィス/コンプリート・アムステルダム・コンサート』(55 Records)稲岡邦弥/
#1000(特別企画)「ニセコロッシ「ECM新譜レビュー・ツアー」:『クレイグ・テイボーン・トリオ』/
『ジョバンニ・グイディ・トリオ』/
『トマシュ・スタンコ・ニューヨーク・カルテット』/
『ジューン・テイバー』/
『ステファノ・バターリア・トリオ』/
『キース・ジャレット|ゲイリー・ピーコック|ジャック・ディジョネット/サムホエア』
『ルシアン・バン|マット・マネリ/トランシルヴァニアン・コンサート』/
『ニコラス・マッソン|ロベルト・ピアンカ|エマヌエレ・マニスカルコ/サード・リール』/
『ユリア・フルスマン・カルテット/イン・フル・ヴュー』(ECM)多田雅範
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連載フォト・エッセイ:Reflection of Music Vol.27『早坂紗知@メールス・フェスティヴァル1992』/横井一江/
連載フォト・エッセイ:JAZZ meets 杉田誠一 Vol.90「梅津和時」/
撮っておきの音楽家たち #63「大方斐紗子(女優・歌手)」/
#64「井上道義(指揮者)」林 喜代種/
オスロに学ぶ #12「見ることと音楽」田中鮎美/
及川公生の聴きどころチェック #164(Extra)特別企画『トーマス・モーガンECM録音聴き比べ〜『菊地雅章トリオ/サンライズ』/『トマシュ・スタンコ・ニューヨーク・カルテット/ヴィスワヴァ』/『クレイグ・テイボーン・トリオ/チャンツ』/『ジョヴァンニ・グィディ・トリオ/シティ・オブ・ブロークン・ドリームス』
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#115「岡部源蔵(as)」稲岡邦弥/
#116「菊地雅章(p)」イーサン・アイヴァーソン
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#70 稲吉紘実著(朗読:神野三鈴 音楽・ピアノ即興演奏:小曽根 真)『絵のない絵本 シリーズ第二作―おおごまだらになりたい』(フレーベル館)稲岡邦弥/
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#523「ブリュッヘン・プロジェクト第4回/フランス・ブリュッヘン&新日本フィルハーモニー交響楽団」伏谷佳代/
#524「東京フィルハーモニー交響楽団第77回東京オペラシティ定期シリーズ」伏谷佳代/
#525「ラチャ・アヴァネシアン ヴァイオリン・リサイタル」伏谷佳代/
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#527「二期会創立60周年記念公演||東京二期会オペラ劇場《マクベス》」佐伯ふみ/
#528「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2013 パリ。至福の時 #147 小曽根 真&塩谷 哲 「パリ×ジャズ」神野秀雄/
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#532「塩谷哲 Satoru Shionoya with Super Salt Band」神野秀雄
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