Vol.13
「東洋一のブルーズマン Tommy Chung」




今まで、「オーストラリ音楽紀行」の名で書き綴ってきたこのシリーズに関して、オーストラリアだけの枠を私が訪問した世界各地での音楽との触れ合いに広げていくことにします。これからは、世界の音楽紀行ということにします。

今回は、香港に行ったときの話をしよう。

Tommy Chung(トミー・チュン)という東洋一のブルーズ・ギターリスト。
この男が凄い。
この男の飲みっぷりが凄い。金遣いがものすごい。
「ブルーズ」という生き様の生き仏・・・Tommy Chung(トミー・チュン)。
お見知りおきの方も多いとは思いますが、日本ではBSMFというレーベルから音源(CD)は出ている。西村雅人が代表をやっているレーベル。

CDの内容は、あの竹田和夫(元クリエーション)がプロデュースで、2003年にリメイクされてタイトルは、『PLAY MY BLUSE』(bsmf-2001)。ブルーズ・ハープで、橋本洋子が参加している。ドラムは、笹井新平。東洋ブルーズの息吹を感じさせるアルバムだ。

2005年には、同じくBSMFレーベルから『BLUSE TIME』(bmsf-2004)というアルバムが出ている。このアルバムは、わが尊敬するハーピスト妹尾隆一郎が参画し、トミーが妹尾とどっぷり四つに組んで、ブルーズと向き合っている。  どの曲もどの曲もトミーのブルーズへの魂が火を噴いている・・・・。

そして、そしてその生き様に支えられたこの男のスライド・ギターが凄い・・・・。スライド・ギターというのは、主にブルーズ・ギターの分野で、鉄柱やウィスキィーのボトルの頭の部分を切って、薬指や小指に嵌めて演奏する方法。
私はたくさんのスライド・ギターの名手を知っている。そう、見聞きしている。
デュアン・オールマン、ジェレミィー・スペンサー、ローウェル・ジョージ、ライ・クーダー、狂気のジョニー・ウィンター ・・・・。
それぞれに、個性的で独自の奏法とパッションを確立している。
これらの兵(つわもの)中にあっても、異彩を放っているのが、トミー・チュンである。

もともとスライド・ギターというのは、通常のギターの弾けないやけぱっちみたいな所からうまれた奏法である。
このやけっぱち度合いが、他のギタリストとかけ離れている。
とにかく、音のグルーブが凄い。スライド・ギターならではの音の揺れに、日本流の侘び、寂びがある。
初めて聞いたとき、つまり始めて一緒に演奏した時は、鳥肌がたった。鳥肌は嘘つかない・・・・。

なぜ鳥肌が立ったのか。

一言で言えば、彼のブルーズへの心酔の仕方そのもの。とんでもない酒飲みで、とんでもなく良い加減な生き方そのもの、がそのまま音や形になっている。20世紀の終わりにこんな人が生きているなんて、というのが、正直な感想だった。お父さんは、裁判長で。トミー本人は、香港生まれの香港育ちの、まるで香港マフィアみたいなのに、ロンドン大学を卒業したインテリ・・・・。ここにアンビバレントなブルーズの生き様が見えるような気がする。これが、彼のやけぱっち度合いを生んでいる理由でもあると思う・・・・。

8/6のスロー・ブルーズなんかは、イントロの頭の一音で、ぶっ飛ぶ。

僕は、共演者として、同じステージの上に立っているのだが、思わずオーディエンスになっている時がある。

トミーがワンコーラス、ソロを弾いた後、私にソロを回してくれるのだが、彼のブルーズ魂に圧倒されて、僕のブルーズ心が萎縮している時がある。

私は、大阪生まれの、大阪育ち。やくざの度合いでは負けないはずだが、彼の大きさに飲み込まれる時が、ある。

この彼のブルーズマンとしての大きさに、アジアのブルーズ・シーンの未来を感じているのは、私だけではないはずだ。



高谷秀司(たかたに・ひでし)
1956年、大坂生まれ。音楽家、ギタリスト。幅広いジャンルで活躍。人間国宝・山本邦山師らとのユニット「大吟醸」、ギター・デュオ「G2us」でコンサート、CDリリース。最新作は童謡をテーマにしたCD『ふるさと』。2010年6月から約1ヶ月間、オーストラリアから招かれ楽旅した。
www.takatani.com

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