Vol.30
ピンク・マティーニの甘美で艶やかな香り...




私は、情景と音楽が認識の中で、自然に交錯していく性質(たち)である。
ピンク・マティーニを、初めて聞いたのは、15年以上前にスペインのバルセロナでのライブだった。
ライブを聴いたというよりは、コンサートを見たというのが実感...。
ピンク・マティーニのサウンドは、勿論、音が耳から入ってくるのだけれども、どうしても、それ以上に情景が浮かび上がってくる。
...燦燦とした五月の陽光を背に森の中に入ると、ひんやりと気持ちよく、馥郁たる香りに思わず深呼吸したくなる...。
こんなに甘美で艶やかな波動を操れる人々は、何者なんだろう...人間が耳で感じる音も目で見える色も人間の認識の仕方の問題、波動と捉えれば同じもの...。
ピンク・マティーニの最初の感想だった。
そして、リーダーでピアニストのトーマスM.ローダーデールは、途轍もない人だと思った。
あまりにも、自然に気持ちよくなる感じが衝撃だった。

それから日本に帰ってきて、十年余り、事ある毎にPM(ピンク・マティーニ)のことを吹聴するが、誰も相手にしてくれなかった。そして今...由紀さおりさんと別のブレイクをしている

さて、彼らの音楽は、日光の霧降の滝に似ている。
霧降の滝へ行く。リズムをつけて歩いていると、なんとなくすべてのことが忘れられるような気になってくる。
滝をじっと見ていると、このまま落ちてもいいような気がする。人をひきつけて離さない何かがある...。

滝になれ わが魂 わが身体

この滝のある高原(霧降高原)には、金色の透き通った鹿が現れそうな気がする。
鹿の目がきらっと光る。
私は、追う...。
私は、追う...。メンバーを指揮する目に似ている。
神橋、含満の淵、裏見の滝...。
裏見の滝へ行くのに、安良沢町という村を通っていく。そこは、長い長い一本の坂道である。
何かにとりつかれた荒武者のように闊歩する。子供連れの母親たちが坂道を降りてくる。

子供連れ 乳房のゆれたる母親に 不埒な炎我にわきけり

このお母さんが可愛い...。

手を引いて 歩く姿態に娘子の 面影少し今もありなん
偉大なる 乳房のゆれにひれ伏して 我の山行き少し遅るる

散策を続ける。
延命地蔵(犬牽地蔵)...。ある領主が、勝道上人の自ら刻んだ地蔵をあざ笑って、中禅寺湖へ投げ入れた。
すると、地響き、雷などが起こり、犬が落ちた。

人は様々な情景に自らの想いをこと付けながら年をとる。追憶のよすがとなる景色はいつまでもそのままであって欲しいと願う。

ピンク・マティーニの音楽は、甘美な情景と共に艶やかに、成長し続けている...。

*自作の定型詩を引用しました。

高谷秀司(たかたに・ひでし)
1956年、大坂生まれ。音楽家、ギタリスト。幅広いジャンルで活躍。人間国宝・山本邦山師らとのユニット「大吟醸」、ギター・デュオ「G2us」でコンサート、CDリリース。最新作は童謡をテーマにしたCD『ふるさと』。2010年6月から約1ヶ月間、オーストラリアから招かれ楽旅した。
www.takatani.com

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