#  883

『ダニエル・ホープ/ロマンティック・ヴァイオリニスト』
text by 大木正純


ドイツ・グラモフォン/ユニバーサル
UCCG1564
2,800円

演奏者:
ダニエル・ホープ(ヴァイオリン、ヴィオラ)、サカリ・オラモ(指揮)、ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団、セバスティアン・クナウアー(ピアノ)、アンネ=ソフィー・フォン・オッター(メゾ・ソプラノ)、ベンクト・フォシュベリ(ピアノ)

曲目:
1. ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番
2. クラーラ・シューマン:ロマンス op.22-1
3. ブラームス:スケルツォ(F.A.Eソナタから)
4. ヨアヒム:ロマンス op.2-1
5. ブラームス:ハンガリー舞曲第1番
6. ヨアヒム:夜想曲 op.12
7. ブラームス:ハンガリー舞曲第5番
8. シューベルト:水の上で歌うD.774
9. ブラームス:聖なる子守歌 op.91-2
10. ドヴォルジャーク:ユーモレスク op.107-1

録音場所:ストックホルム、ハンブルク
録音時:2010年8月
プロデューサー:ジョン・ウェスト、ヘルムート・ブルク
エンジニア:マイク・ハッチ、ヘルムート・ブルク

 ヨーゼフ・ヨアヒムの名は、たとえばブラームスの伝記などにはそれこそ嫌と言うほどたびたび登場するし、ヴァイオリン協奏曲の歴史的名作(ベートーヴェンやブラームス)のカデンツァの作者、あるいは各種作品のヴァイオリン用編曲者として、いまもことあるごとに言及される。しかしコンサートにしてもディスクにしても、この人物が主役になるというケースは、これまであまりなかったのではないだろうか。

 イギリスの個性派ヴァイオリニスト、ダニエル・ホープのニュー・アルバムは、そのヨアヒムにスポットを当てたユニークな1枚。いわば音楽による小ヨアヒム物語といった趣である。収録曲はヨアヒムが大幅に手を入れた校訂版で世界に流布しているブルッフの名高いヴァイオリン協奏曲第1番以下、ヨアヒムに献呈されたクラーラ・シューマン作の小品「ロマンス」、ヨアヒムのモットー“自由に、しかし孤独に”に由来する共作ソナタ(F.A.E)のブラームスによるスケルツォ楽章、次いでヨアヒム本人の小品「ロマンス」、ヨアヒム編曲によるブラームスの人気ナンバー「ハンガリー舞曲第1番」……(そのほか5曲)という具合に続いてゆく。

 それだけならただの寄せ集めに終わってしまいそうなところだが、どっこい、選曲にも曲順にもそれなりに工夫が凝らされていて、注意深く聴くリスナーのイメージの中に、おのずとヨアヒムの音楽家としての人間像が浮かび上がってくる仕掛けになっているところがミソである。

 ほかでは容易に聴けないクラーラの「ロマンス」やヨアヒムの「夜想曲」が掘り出しものとも言うべきチャーミングな作品だし、ブラームスの知られざる(?)名作歌曲「聖なる子守歌」がオッターという豪華な客演で演奏されているのも嬉しい。(大木正純)

WEB shoppingJT

FIVE by FIVE 注目の新譜

NEW5.06 '13

FIVE by FIVE
#983『藤井郷子 Satoko Fujii New Trio/Spring Storm』(Libra Records=ボンバ) 悠 雅彦/ #984『ドヴォルザーク&ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲集/ユリア・フィッシャー』(デッカ=ユニバーサル)大木正純/ #985 『ギラ・ジルカ & 矢幅歩 SOLO-DUO/Breathing ...』(Jump World=Boundee)望月由美/ #986『Michael Reis/Hidden Meaning』(Double Moon)伏谷佳代/ #987 『奥平真吾 THE FORCE/Live At PIT INN〜I didn't know what time it was』(ピットインミュージック)望月由美/ #988『Alex Cline/For People in Sorrow』(Cryptogramophone)稲岡邦弥/ #989『キース・ジャレット|ゲイリー・ピーコック|ジャック・ディジョネット/サムホエア』(ECM=ユニバーサル)稲岡邦弥

COLUMN
巻頭エッセイ:丘山万里子:カデンツァVol.58「京都での朝の勤行」丘山万里子/ 連載フォト・エッセイ:音の見える風景Chapter27「竹内 直」望月由美/ 撮っておきの音楽家たち #61デュオ・アマル(ピアノ・デュオ)/ #62「ピエタリ・インキネン」(指揮者)林 喜代種/ カンザス・シティの人と音楽#36(EXTRA)「東洋と西洋のミックスした国マカオで出会った音楽」竹村洋子/ ニセコロッシ・コンサート・ツアー19(Niseko-Rossy Pi-Pikoe) / 及川公生の聴きどころチェック #162『小山太郎/ビート・ザ・ブルース』(M&I/ポニーキャニオン)/ #163『塩谷 哲/アロー・オブ・タイム』(ビクターエンタテインメント)

CONCERT/LIVE REPORT
#512「東京フィルハーモニー交響楽団第76回東京オペラシティ定期シリーズ/ミハイル・プレトニョフ/小川典子」伏谷佳代/ #513「マリア・ジョアン・ピリス&アントニオ・メネセス デュオ・リサイタル」伏谷佳代/ #514「エスペランサ・スポルディング〜ラジオ・ミュージック・ソサイエティ」神野秀雄/ #515「黒沼ユリ子 ゴールデン・アニバーサリー.コンサート」西松朝男/ #516 エグベルト・ジスモンチ & アレシャンドレ・ジスモンチ「ギターデュオ、ピアノソロ」神野秀雄/ #517「航プレゼンツKarl2000日本デビュー・ツアー」伏谷佳代/ #518「ブリュッヘン・プロジェクトT・U・V/フランス・ブリュッヘン&18世紀オーケストラ」伏谷佳代/ #519「ブリュッヘン・プロジェクト〜18世紀オーケストラ&新日本フィル 第2回」佐伯ふみ/ #520「上原ひろみ〜ソロBlue Note Tokyo' s 25th Anniversary Year Special Program」悠 雅彦/ #521「ポール・モチアン・トリビュート・コンサート」スティーヴ・バップ #522「第63回 藤井昭子〜地歌 Live」

Copyright (C) 2004-2013 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.