#  909(アーカイヴ篇)

『Lou Reed|Laurie Anderson|John Zorn/The Stone: Issue Three』
text by 杉田誠一


TZADIK JZ080610-13 (2008.4)

John Zorn (sax)
Lou Reed (g)
Laurie Anderson (vln, electronics)

1. Part 1
2. Part 2
3. Part 3

 久しぶりに買って満足したCDである。STONEは、「ミュージシャンのミュージシャンによるミュージシャンのための場」である。ミュージシャンの出資による、ミュージシャン管理の場。そう、ニューヨークの情報発信でもっともコアなロフトである。主宰は、ジョン・ゾーン。入場料は10ドル。ドリンクもフードもメニューもない。
『The Stone:Issue Three』は、2007年4〜12月、2008年1月〜3月まできっかり1年間の超リアルでシリアスなドキュメント。1音1音が冷徹で、全く軽く聞き流して済むような場面は、存在しない。
 つまり、ここは、ゆるいメロウなダル空間とは無縁なのだ。ここまでマジに音と対峙する、アンビエントな空間がかつてあっただろうか?
「インプロバイズド・ミュージックのいま」なんてくくりすら陳腐に見える。
 月1、全12曲は、いずれもルー・リード(g)、ローリー・アンダーソン(vln, synth)、ジョン・ゾーン(sax)による(立ち位置、左より同)確執と交感。知と情が、沸点を超えると、恐るべき覚醒空間を永続せしめんとする。
 ぼくにとって最も鮮烈に迫ってくるのは、ルー・リードである。ルーは、ここでは一切、歌を唄っていない。1970年代初めのベルベット・アンダーグラウンドの雄がインストだけでユニットを支えているのである。ハード・コア・パンクは、21世紀には、インプロバイズドに覚醒する。3者の音楽的対峙は、ルー対ローリー・アンダーソン+ジョン・ゾーンという構造が明らかに浮上してくる。<ベルベット・アンダーグラウンド>は、ニューヨークのいま、そのものではある(「あった」ではない)。まさに、オルタナティヴで、とりわけアンディ・ウォーホールとのかかわりは、すこぶる興味深い。
 かつて、レーザーディスクで、ニューヨークに生きるルーの映像を視聴したことがある。ルーの部屋は、マンハッタンの街を見渡される総ガラス張り。「深夜、ひとりここにいると、あらゆるものが聴こえる。あらゆるものが見えてくる。消防車のサイレン音すらが、音楽なんだって、分かるかい?」って、ルーはクールに語りかけてくる。
 いいかえるならば、“Stone Curators/The Third Year”は、音による最も突出したニューヨーク・コンクレートなのである。Stoneは覚醒をせまる。
 Stoneは、ミュージシャンにとって、表現の場とは何か? その輝かしい血みどろの帰結である。キミは、この狂おしい戦慄を享受しうるか?
“ I Hear Her Call My Name”___。ぼくの大好きな、ルー・リードの曲である。ぼくには、” My Name” が、“ New York” に聴こえる。
 カオスの覚醒にニューヨークを聴く。そして、発見!! もうひとつの同時代音楽を見る。(杉田誠一)

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FIVE by FIVE 注目の新譜

NEW5.06 '13

FIVE by FIVE
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COLUMN
巻頭エッセイ:丘山万里子:カデンツァVol.58「京都での朝の勤行」丘山万里子/ 連載フォト・エッセイ:音の見える風景Chapter27「竹内 直」望月由美/ 撮っておきの音楽家たち #61デュオ・アマル(ピアノ・デュオ)/ #62「ピエタリ・インキネン」(指揮者)林 喜代種/ カンザス・シティの人と音楽#36(EXTRA)「東洋と西洋のミックスした国マカオで出会った音楽」竹村洋子/ ニセコロッシ・コンサート・ツアー19(Niseko-Rossy Pi-Pikoe) / 及川公生の聴きどころチェック #162『小山太郎/ビート・ザ・ブルース』(M&I/ポニーキャニオン)/ #163『塩谷 哲/アロー・オブ・タイム』(ビクターエンタテインメント)

CONCERT/LIVE REPORT
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