# 931
『Ravi Coltrane/Spirit Fiction』
text by 望月由美
| Blue Note 50999 18937 2 7 |
Ravi Coltrane (ts,ss)
Joe Lovano(ts) on 9,10
Luis Perdomo (p) on 1,3,4,7,11
Drew Gress (b) on 1,3,4,7,11
E.J.Strickland (ds) on 1,3,4,6,7,11
Ralph Alessi (tp) on 2,5,8,9
Geri Allen (p) on 2,5,8,10
James Genus (b) on 2,5,8,9
Eric Harland (ds) on 2,5,8,9
1. Roads Cross(R.Coltrane,L.Perdomo,D.Gress,E.J.Strickland)
2. Klept(R.Alessi)
3. Spirit Fiction (R.Coltrane,L.Perdomo,D.Gress,E.J.Strickland)
4. The Change、My Girl (R.Coltrane)
5. Who Wants Ice Cream(R.Alessi)
6. Spring & Hudson(R.Coltrane)
7. Cross Roads(R.Coltrane,L.Perdomo,D.Gress,E.J.Strickland)
8. Yellow Cat(R.Alessi)
9. Check Out Time (O.Coleman)
10.Fantasm(P.Motian)
11.Marilyn&Tammy(R.Coltrane)
プロデユーサー:Joe Lovano and Ravi Coltrane
エンジニア:Dave Kowalski(1,3,4,7,11)、Chris Allen(2,5,8,9,10) & Joe Marciano(6)
スタジオ:Bennett’s Studuis,Englewood,NJ(1,3,4,7,11)、Sear Sound,New York,NY(2,5,8,9,10) & Systems Two Recording,Brooklyn,NY (6)
7月になるとコルトレーンを聴きたくなる。いま最も胸に熱く迫るのは『The Olatunji Concert』(Impulse!)。
本作はその、コルトレーンの次男、ラヴィ・コルトレーンの新作。
ラヴィはエルヴィン・ジョーンズ(ds)の「ジャズ・マシーン」で来日してからはや21年、今年で46歳になった。40歳で夭折した父コルトレーンを既に超えているがジャケットに載せられたラヴィの顔立ちはますます父親そっくりになってきた。そして父と同じ楽器を選択したラヴィだがその音色は父に比べソフトでメロウである。これも時代の移り変わりなのかもしれない。
ルイス・ペルドモ(p)、ドリュー・グラス(b)、E.J.ストリックランド(ds)とのワンホーン・レギュラー・カルテットの演奏とジェリ・アレン(p)、ジェームス・ジナス(b)、エリック・ハーランド(ds)のリズムにトランペットのラルフ・アレッシを加えた2管編成という二組の編成、さらにはジェリ・アレンとのセットにはジョー・ロヴァーノ(ts)が2曲に参加しラヴィとの2重奏を聴かせるなどヴァラエティに富んだ内容になっている。ラヴィは(1),(3),(11)でソプラノを吹き、そのほかはテナーを吹いているがテナーのほうが力強くラヴィらしさをだしている。
レギュラー・カルテットではラヴィ自身のオリジナル曲(4)<The Change、My Girl>がレギュラー・グループらしい一体感が出ていてベスト。ラヴィのテナーがストレートにメロディーを唄うあたり、父の<ナイーマ>を連想させる。またドリュー・グレス(b)はジョン・バランタイン(p)トリオ(NYJAM)や辛島文雄(p)の『グレート・タイム』(Videoarts Music)などでの堅実なプレイで注目してきたが、ここでも地味ななかにもときおり大胆なアクセントをつけてカルテットの推進役を担っている。そしてルイス・ペルドモ(p)の流麗でリズミカルなタッチが今の息吹を感じさせる。
2管編成では(5)<Who Wants Ice Cream>で(tp)と(ts)の絡み合いが新鮮。そしてジェリ・アレン(p)がソロをとり始めると途端にジェームス・ジナス(b)とエリック・ハーランド(ds)が激しくうごめきだして俄然面白くなる。ジェリ・アレンは定評のあるチャーリー・ヘイデン(b)、ポール・モチアン(ds)とのトリオもよかったが、ここでのジェームス・ジナスとエリック・ハーランドとのトリオはそれにも増して新鮮である。
(6)<Spring & Hudson>一曲のみラヴィとE・J・ストリックランド(ds)とのデュオ。かつて父コルトレーンはエルヴィン・ジョーンズ(ds)と、そしてラシッド・アリ(ds)と熾烈なしかし荘厳なデュオを残している。ラヴィの意識にも父への思いがあったのかもしれない、しかし、ここでのデュオは余りにも短いトラックで序奏のみで終わってしまったかのようである。
今回、アルバムのプロデューサーとして関わっているジョー・ロヴァーノ(ts)が(9)、と(10)の2曲に加わり、ラヴィとの2テナーを聴かせてくれている。そしてその2曲を本アルバムの一番の聴かせどころにしている辺りは流石ジョー・ロヴァーノである。
(9)<Check Out Time>はオーネット・コールマンの曲。エリック・ハーランド(ds)の刻むテンションの高いリズムの上を2(ts)+(tp)の3管でテーマを提示、一聴してオーネットとわかるムードを醸し出している。ラルフ・アレッシ(tp)がミュートをつけてドン・チェリーの雰囲気をうまくだしている。ラヴィとジョー・ロヴァーノはかつてサキソフォン・サミットで共演している親しい間柄でもありリラックスした2テナー・アンサンブルが楽しめる。
(10)<Fantasm>はポール・モチアンの曲。ジェリ・アレンの波間を漂うようなピアノの上でラヴィとジョーが幻想的な対話を交わす。ラヴィとジョー、二人のテナーの肌触りがくっきり浮かび上がる好演である。
本アルバムはラヴィ・コルトレーンのブルーノート移籍第一弾であり、ブルーノートの重鎮ジョー・ロヴァーノとラヴィが共同プロデュースに当たっていて、今後のラヴィの方向を示す新たなショーケースである。(2012年7月、望月由美)
:
#983『藤井郷子 Satoko Fujii New Trio/Spring Storm』(Libra Records=ボンバ) 悠 雅彦/
#984『ドヴォルザーク&ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲集/ユリア・フィッシャー』(デッカ=ユニバーサル)大木正純/
#985 『ギラ・ジルカ & 矢幅歩 SOLO-DUO/Breathing ...』(Jump World=Boundee)望月由美/
#986『Michael Reis/Hidden Meaning』(Double Moon)伏谷佳代/
#987 『奥平真吾 THE FORCE/Live At PIT INN〜I didn't know what time it was』(ピットインミュージック)望月由美/
#988『Alex Cline/For People in Sorrow』(Cryptogramophone)稲岡邦弥/
#989『キース・ジャレット|ゲイリー・ピーコック|ジャック・ディジョネット/サムホエア』(ECM=ユニバーサル)稲岡邦弥
:
巻頭エッセイ:丘山万里子:カデンツァVol.58「京都での朝の勤行」丘山万里子/
連載フォト・エッセイ:音の見える風景Chapter27「竹内 直」望月由美/
撮っておきの音楽家たち #61デュオ・アマル(ピアノ・デュオ)/
#62「ピエタリ・インキネン」(指揮者)林 喜代種/
カンザス・シティの人と音楽#36(EXTRA)「東洋と西洋のミックスした国マカオで出会った音楽」竹村洋子/
ニセコロッシ・コンサート・ツアー19(Niseko-Rossy Pi-Pikoe) /
及川公生の聴きどころチェック #162『小山太郎/ビート・ザ・ブルース』(M&I/ポニーキャニオン)/
#163『塩谷 哲/アロー・オブ・タイム』(ビクターエンタテインメント)
:
#512「東京フィルハーモニー交響楽団第76回東京オペラシティ定期シリーズ/ミハイル・プレトニョフ/小川典子」伏谷佳代/
#513「マリア・ジョアン・ピリス&アントニオ・メネセス デュオ・リサイタル」伏谷佳代/
#514「エスペランサ・スポルディング〜ラジオ・ミュージック・ソサイエティ」神野秀雄/
#515「黒沼ユリ子 ゴールデン・アニバーサリー.コンサート」西松朝男/
#516 エグベルト・ジスモンチ & アレシャンドレ・ジスモンチ「ギターデュオ、ピアノソロ」神野秀雄/
#517「航プレゼンツKarl2000日本デビュー・ツアー」伏谷佳代/
#518「ブリュッヘン・プロジェクトT・U・V/フランス・ブリュッヘン&18世紀オーケストラ」伏谷佳代/
#519「ブリュッヘン・プロジェクト〜18世紀オーケストラ&新日本フィル 第2回」佐伯ふみ/
#520「上原ひろみ〜ソロBlue Note Tokyo' s 25th Anniversary Year Special Program」悠 雅彦/
#521「ポール・モチアン・トリビュート・コンサート」スティーヴ・バップ
#522「第63回 藤井昭子〜地歌 Live」
Copyright (C) 2004-2013 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.