#  096

緊急インタヴュー
Larry Carlton|ラリー・カールトン  Guitar/Vocal

Interviewed by 高谷秀司 Hideshi Takatani
2011年4月11日 @ホテル・オークラ
Interpreter:古谷暢康 Nobuyasu Furuya
Photo:竹村洋子 Yoko Takemura
Special thanks to:Mr.Robert Williams, Blue Note Tokyo, Yoko Takemura

ラリー・カールトン
1948年3月2日、カリフォルニア州トーランスの生まれ。
6才からギターを始め、ハイスクール時代にジャズに目覚めたが、アコースティックとエレクトリック・ギターをこなし、フュージョンや、ブルース、ポップス、ロックなどジャンルを超えて活躍の場を求めた。
1988年、私有のスタジオRoom335でアルバム録音中銃乱射事件に巻き込まれ喉に銃撃を受けたが奇跡の生還を遂げ、以来“Mr.335”がニックネームとなる。
70年代前半には「The Crusaders」、90年代後期には「Fourplay」のメンバーとして活躍したが、多くは、ソロやセッションとしての活動が多い。
松本孝弘 (1961~) との共同名義によるアルバム『テイク・ユア・ピック』が2011年度のグラミー賞で「Best Pop Instrumental Album」賞を受賞、4度目の受賞となった。日本とは、他に、スティーヴ・ルカサーとの大阪でのライヴ・アルバム、ロベン・フォードとの東京でのライヴ・アルバムなどを制作するなど縁が深い。インタヴュアのギタリスト高谷秀司とは80年代後期にLAのBaked Potatoなどで共演歴がある。

♪ ブルースとフュージョンを融合させた「Larry Carlton Music」


JT:本日はインタビューを承諾いただきありがとうございます。じつは私は40年ほど前にサクラメントのパームズハウスで演奏をしていた時にラリーさんにお会いしているのです。

カールトン: ああ、そうだったね、覚えているよ!懐かしいな。随分前の話ですね。


JT:本日のインタビューはJazzTokyo誌への掲載予定なのですが、私はギタリストですので、同業者としての観点から質問させていただきます。

カールトン:それなら良い質問も面倒な質問も来そうだね!


JT:松本孝弘氏とのグラミー賞受賞に関しては嫌となるほど質問されたでしょうから今日は別の事を訊きたいと思います(一同爆笑)。まずお伺いしたい事なのですが、1980年代リー・リトナーとの共演等を聞いていて感じたのですが、当初ブルースとフュージョンというまるで違う音楽を結びつけアレンジする事に若干の違和感を覚えました。しかし時間を重ね、ある時点からそれが非常に良く融合している様に思え初め、それ以来貴方の音楽が真の意味で「Larry Carlton Music」という風に確立された様に感じています。

カールトン:そうだと思いますよ。自ら言える事ですが、重く濃い情念を持ったブルースという音楽とその逆にあるかのようなフュージョンというジャンルを双方融合させたのは、恐らく私が最初であると言えるでしょう。私の音楽界に対する最大の貢献の一つはそれであるとも思います。


♪ つねに自身の創造の欲求に忠実に従ってきた


QJT:その様な異なるジャンルとの融合、例えばポップという音楽からの松本孝弘氏と貴方の音楽との融合とか、時にはプロデューサーや市場に迎合して新たな音楽を手がけなければならないかもしれない。それに関して、音楽家の真の創造を追求する事、芸術至上主義的な立場と、それとは逆のマーケティング等を意識した音楽戦略というもの、これらについてはどう思われますか?

カールトン:私は常に自身の創造の欲求に忠実に従っていると思います。Tak(註:松本孝弘)の音楽を聞いた時、彼の素晴らしいギターに感動し触発されましたし、彼の作曲の技術、並びにプロデューサーとしての実力に感動しました。そしてそのような才能のある人物と活動を共有したいと思いましたし、すでに私を30年以上にもわたって聞き続けてくれているファンも、そのような最高の音楽家と私の共演を聞きたがるだろうという事に確信を持っています。音楽的にせよ人間的にせよ、彼と共演する事は最高の結果をもたらすことに確信があったからです。素晴らしい企画ですよ。


JT:今までに多くのメジャー・レーベルと契約をされてきましたね。しかし現在貴方は全てそれらを離れ、ご自身のレーベル、言わばメジャーの対極であるインディーズへと再び戻った訳です。その最たる理由は何故でしょうか?

カールトン:私は過去17年間メジャーに在籍していました。無論レーベルからは私の音楽に対する制約や干渉がありました。つまり、ラジオ等の放送で使われる事を意識していたり、やはりマーケティングの事を考える訳です。それらが次第に私の音楽家としての純粋な創造を制限するようになって来たのです。自由を奪われ、レーベルに自分と自分のイメージが操作されるという事。それが果たして自身の真の音楽を愛するファン達の聞きたいものか、そして自分のファンの事を考えた時に、私の音楽を純粋にリリースして私の真の創造を求めるファンのためにも自分でレーベルを設立するしかない、と思ったからです。それはメジャー・レーベルとの契約活動では決してなせるものではありません。


JT:そうなるとファンとのコミュニケーションが当然重要になります。世界の流れとしても、最近貴方もiTunesでの配信をされていますね。iTunesでは1曲単位で曲が買えて簡単に誰でもポケットに入れて持ち歩き、いつでもどこでも楽しむ事が出来る。しかし当然CDやアナログレコードはまるで違うものです。曲順や構成、ジャケットやデザイン等、音楽家の意図や構想が省かれる事になり、一つの作品や商品としての価値は単純化される事になります。もっと簡単で直接的な消費のiTunes配信には良い面も悪い面もあると思いますが、それに関してはどうお考えですか?

カールトン: 言える事はただ「それが現代の今のやり方」であるからですよ。我々は4年前からこのような手段での配信を始めています。そして今までのディストリビューションからメジャーなデジタル・ディストリビューションへと移行しつつあります。こうする事によってさらに世界で私の音楽を耳にする事が簡単になるでしょうし、市場を考えるという事はビジネスに繋がりますが、結局はそれだけリスナーの事を考えている訳ですから、私の音楽をリスナーにより簡単に早く届ける、そして皆が聞きたいものを自由に選べる、というのは悪い事ではないでしょう。


♪ ブルースはより複雑な人間の感情と表現を伝えることができる


Q7(Kalle Kalimaへ): JT :では、最高のブルース・ギタリストである貴方に究極的な質問です。「ブルースとは何か?」

カールトン:そうですね、音楽は常に何事かの制約や制限の下、始まります。しかしそこには常に何かの物語があります。時にはとても悲しい物語であったりしますね、それがブルースと呼ばれているものだったりとか。音楽的にも和音的にもブルースは非常に簡素な構造です。ブルースには3コード程度しかありませんからね。しかしそれだけ単純な故に自身の想いを表現する時に、多くのものが運べるように思うのです。自身の魂の底から出てくるもの、それはやわな音楽構造や複雑なものでは表現し難い様に思えます。故にブルースという単純な音楽がより複雑な人間の感情と表現を伝える事が出来るのではないでしょうか。


♪ 日本がこの悲劇から必ずや立ち直ることを確信している


JT:この大震災の中、多くのチャリティー・コンサートやレコーディングが企画されています。明日録音される予定のインコグニートのブルーイのプロジェクトへの参加について聞かせて下さい。

カールトン:あれは成田に到着したときのことですね。ブルーイがシングル・アルバムを作るということをプロモーターから聞いて、もし私の参加が必要ならいつでも演奏するよ、と伝えたのですね。そうしたら返事があり、明日録音する事になったというだけの事ですよ。そういうことなら何でも何時でも協力しますよ。


JT:私は被災地にも行きましたし取材もした人間なので言えるのですが、現地を見た限り、やはり物質的な援助が最優先であることは事実です。世界的に盛り上がるアーティストの協賛・支援ですが、芸術的・音楽的な支援という事、またこのような時に音楽家は何をなすべきか、その使命という事についてお聞かせ下さい。

カールトン:それはその音楽家が起こった災害に如何に関わっているか、によると思います。アメリカの音楽家は日本について良く知らない人間も多いでしょうし、行った事すらない者も多いと思います。しかし日本の聴衆やプロモーターは長年にわたりアメリカの音楽界を支えて来てくれました。そう考えると我々アメリカの音楽家は日本と真に関係が深い者同士ですし、なにより私自身がそうですが、30年以上にもわたり日本のファンから愛され続け支援され、私と日本人の皆さんや日本の文化というものはとても親密な関係にあるのです。それほど極めて大きなリスペクトをこれほど享受している身な訳ですから、ただ笑顔を見せる事であろうとも、その他なんでも私の出来る事であればとにかくしたい、しなければならないと思ったまでです。


JT:世界各国からの来日予定ミュージシャンが相次いで来日を見合わせる中、貴方はこのような状況にも関わらず日本のために来日を決断されました。お話の内容と共に我々は貴方に大変感謝したいということを、重ね重ねお伝えします。

カールトン:当然の事をしたまでですよ。ああそうだ、『The Sound of Philadelphia』のメイキングDVDが制作されているのですが、日本ではまだ発売されていないという事を数日前に知ったので、アメリカから二千枚送らせたのです。それを同時に発売して、安価なDVDなのですが、その売り上げを寄付金として被災地に提供しようと考えています。どんな些細な事でも良い、我々が出来る事をとにかくしなければならないのです。


JT:素晴らしい事です。ぜひとも貴方からのメッセージを今の日本に伝えたい、何かお言葉はありますか?

カールトン:日本人は忍耐強く団結の強い民族です。現に今日本国内であのように冷静に、そして絆強く人と人がお互いに助け合い支え合い、瓦礫の中から立ち上がろうとしています。日本がこの悲劇を必ずや乗り越えるであろう事を確信しています。私は日本の人々を信じていますよ。


JT:このような極限状態の中では人間の一番隠されていたところがあらわになります。魂の根底、とでも言えるところに語りかけるブルース、そこに訴えるブルースを演奏される貴方が日本人を奮い立たせる事は間違いありません。今晩の演奏もとても楽しみにしています。インタヴュー、どうもありがとうございました。

カールトン:感謝するのはこちらの方です。今こうして日本に来ている事をとても光栄に、誇りに思っているのですから。


* ラリー・カールトンのFacebook http://www.facebook.com/Mr335.LarryCarlton















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