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タイガー大越|Tiger Okoshi (Trumpet/Flugelhorn/Producer/Arranger)

寅年の1950年3月21日、兵庫県芦屋市の生まれ。13才の時に大阪でルイ・アームストロングの公演を聴き、トランペットに目覚める。1972年、関西学院大学卒業と同時に結婚、渡米、ボストンに住み着く。1975年首席で卒業の翌年、ビル・フリゼール(g)をオリジナル・メンバーとするフュージョン・バンド「タイガーズ・バグ」結成、華々しい活躍を展開。1978年、ゲイリー・バートン・カルテットに参加、『タイムズ・スクエア』(ECM) 録音、ワールド・ツアー。
1997年、バークリー音大教授となり、多くの後進を育てながら内外で演奏活動を続けている。CDに『タイガー大越・プレイズ・スタンダード』(Geneon/2008)
他多数。http://tigerokoshi.com

2012年5月28日 ミラノ
インタヴュワ:稲岡邦弥
Photos:米田泰久
Off-stage photos:相本 出

♪ 滞米生活40周年に渡辺貞夫と共演を果たす


JT:今年は、滞米生活40周年、合わせて結婚生活も40周年ということですね。
おめでとうございます。


大越:そうです。1972年に大学を卒業して結婚し、ボストンに来てそのまま住み着いて40年目です。


JT:ボストンはどういうきっかけだったのですか?

大越:そもそもは新婚旅行で出掛けたのです。グレイハウンドのバスでロスを出て大陸を横断してボストンに着きました。バークリーOBの渡辺貞夫さんから紹介されていた生徒は在学しておらず、他に知り合いもなく、途方に暮れたのですが、帰りの航空券を解約し、何ヶ月間かバークリーでジャズを勉強してみようと入学し、卒業して、教える立場になり現在まで続いているという状況です。


JT:その渡辺貞夫さんと昨日は2管でフロントに立ちましたね。

大越:ええ、感無量でした。終わってからボストンやバークリーについていろいろ話が弾みました。


JT:ある意味で滞米生活のきっかけともなった渡辺貞夫さんと同じグループで40年目に共演したのですからね。

大越:教授としてバークリーで教えていることを説明しましたら、「後輩のためにしっかり頑張ってくれ」と励まされました。


JT:現在は、トランペットとアンサンブルの講座を持っているのですか?

大越:他に、リサイタル・ワークショップという講座もあります。これは、将来ステージを目指す生徒に、プロとしての心構えやステージ上でのマナーやプレゼンテイションの最善の方法を教える講座です。ロック、ジャズ、ポップ、フォーク、民族音楽などのあらゆる分野を志すパーフォーマー達(管楽器プレーヤー、歌手、弦楽器プレーヤー、ドラマー等)が対象です。


JT:バークリーでは何ヶ国から生徒が来ているのですか?

大越:約70ヶ国です。


JT:かつては日本の生徒が多かったそうですが。現在は韓国からの生徒が多いそうですね。やはり、国の勢いでしょうか?

大越:韓国は、アメリカ、カナダに次いで3番目に生徒が多いですね。国の勢いもあるでしょうが、各国でオーディションを始めたことにも原因があると思います。


JT:先日、東京でお会いした時もオーディションで帰国している、とのことでしたね。バークリーのスタッフが一緒でした。

大越:従来、神戸と東京でオーディションをしてきたのですが、来年2月には浜松で予定しています。


JT:山中千尋さんがディスク大賞をとるなど大活躍中ですが、最近とくに目をかけている生徒はいますか?

大越:(寺久保)エレナですね。彼女は高校在学中に夏期セミナーに参加していたのですが、高校を卒業して正式に入学し、生徒として励んでいます。僕の代理としてアメリカ国歌と君が代を演奏してもらったりもしました。(笑い)バークリーで活躍する生徒は他州、他国のフェスティバル等にも参加します。エレナの他に日本人では、大林たけし(ピアノ)、曽根麻央(トランペット)、馬場ともあき(テナー)、今年の秋から来ることになっているアルトの中島あき達の将来はとっても楽しみです。


JT:まだまだバークリー時代が続きそうですね。

大越:来年秋の竣工を目指して構内にビルを建設中で、このビルの中にはホールや学生寮も設けられています。


JT:ゆっくりできる時間はなかなか来そうもないですね。

大越:来春に金管楽器課の主任に推されたのですが、それは断りました。でも来年はヴァレンシア(スペイン)のバークリー校で教える事になりそうです。今回は、ミラノからヴェローナ、べニス、フィレンツェそしてローマに行きます。ボストンはNYに近いのですが、ヨーロッパまでも5、6時間ですからロケーション上もとても便利なのです。






♪ ジョージ・ラッセルから「マイルスになれ」といわれた


JT:ヴェローナは今回のイベント JapzItalyのプロデューサー、ロベルト・ゾルジの地元ですが。

大越:ヴェローナは中世の面影がそのまま残っているとても趣のある街で、ミラノから1時間半ほどですから、ぜひ彼女に見せたいと思って。ジョージ・ラッセルのLiving Timeオーケストラ(LTO)でジャズ・フェスに出演したのですが、街の美しさが忘れられないのですね。


JT:LTOはいつ頃ですか?

大越:1984年に初めて参加して、亡くなる(2009年7月27日)前までメンバーでした。


JT:僕も一度だけヴァンガードで聴いたことがあります。たしか日野皓正さんが入っていたと思います。

大越:僕は日野さんの後に入団しましたが、来日公演(1988年)は僕が同行しました。
彼の有名な理論書『The Lydian Chromatic Concept of Tonal Organization』の邦訳(『リディアン・クロマティック・コンセプト』エー・ティー・エヌ社/2005)が刊行された時も同行しました。
註:ジョージ・ラッセルの公式サイトによると、「1986年に英国文化振興会のコンテンポラリー・ミュージック・ネットワークの招きで米英のミュージシャンを中心としたオーケストラによる楽旅を契機に“インターナショナル・リヴィング・タイム・オーケストラ”を結成、ソロイストには、スタントン・デイヴィス、デイヴ・バージェロン、ブラッド・ハットフィールド、スティーヴ・ロダー、タイガー大越、アンディ・シェパードなどがいた。ミュージシャンたちはラッセルの音楽に類いまれな理解力を示し、ファンクとロックのダイナミズムと電化サウンドのパワーを持たされた複雑かつ挑戦的で圧倒的な音楽で聴衆を驚かせた」とある。
また、来日公演は1988年2月の第4回「トーキョー・ミュージック・ジョイ」で、ラッセルの「リディアン・クロマティック理論」に関心のあった音楽監督武満徹の提案で実現、プロモーターの鯉沼利成氏によると「世界中からジョージのオーケストラに必要なミュージシャンを集め、東京で6日間リハーサルを続けてからコンサートをやりました」。


JT:LTOの面白さはどこにあると思いますか?

大越:LTOに限らず、ジョージ・ラッセルが好きなのは、伝統に縛られず、非常にユニークでオリジナリティがあるところですね。LTOについていえば、音楽がカレイドスコープ的で千変万化する。それを可能にしているのが、異なる調性のメロディを幾つか重ねたり、ホーン・セクションとリズム・セクションの拍子を違えたりする手法ですね。


JT:演奏も骨が折れそうですね。

大越:彼が指揮をするのですが、セクション毎に異なる拍子を出しているうちに手の動きが複雑になってそのうちダンスになってしまってね。事情を知らない客席から見ると、ジョージがダンスを踊っているようにしか見えない...。


JT:具体的にはどのような指示がありましたか?

大越:彼はマイルス・デイヴィスが大好きで、とにかく、「マイルスになれ、マイルスのようにやれ」と。もちろん、コピーをしろということではなく、彼のスピリットを学べ、という意味ですが。


JT:伝統に縛られず、つねに前向きに、新しいことに挑戦しろ、ということですね。

大越:そういうことですね。






♪ 阪神淡路大震災で実家が全壊、呆然自失の期間が続いた


JT:阪神淡路大震災の後しばらく演奏できない時期があったそうですね。

大越:大震災の時、僕は芦屋の実家にいたのですが、全壊しました。複雑な思いを残したままボストンに戻ってからが大変でした。トランペットを吹く気力が全く無くなりツアーをキャンセルし、一人泣いていました。日本で生まれた大越徹とボストンで生まれたタイガー大越が真剣に話し始め、何とかジョージ・ラッセルから受けていた4月のフランスでの仕事をきっかけに戻りました。


JT:音楽を通じたボランティア活動を始められたのもこの頃ですか?

大越:そうですね。ジョージとのツアーが終わって帰宅したらボストン東スクールからメールが届いていたんですね。この学校は自閉症児の教育で知られる武蔵野東学園が開いたもので、いわゆる情緒障害児の閉ざされた心を音楽で開かせる試みに参加しました。


JT:それが旭川の「情緒障害児音楽教室」に発展するわけですね。

大越:旭川には何度か出掛けています。ゲイリー・バートンが参加したときもあります。今回のミラノのチャリティ・コンサートも大震災の被災児支援ということで興味を持ちました。
当初の企画では、被災地の子供達が描いた絵とミラノ在住の日本の子供たちの絵を展示したり、被災地の女性が制作した「ピームーシー」というマスコットを活用する計画もあったのですが、ぎりぎりまで会場が二転三転したこともあってすべて中止、音楽に絞らざるを得なかったのです。


JT:最近、小泉文夫さんや禅の本をよく読まれるそうですが。小泉文夫さんはフィールドワークで知られる民族音楽学者ですね。

大越:彼が日本の音楽を愛する情熱は僕たち海外に住む音楽家が憧れるもの。僕も世界をツアーし各国の様々な人種が理由あって歌い始めた音楽には大変興味を持っていますが、彼の知識と言葉はいつも間違いなく僕を前進させてくれます。小泉さん有り難う!


JT:禅の本というのは。

大越:本は、ジムへ行ってワークアウト、水泳、ヨガなどをやった後にリラックしながら読んでます。今あるものに一生懸命取り組む、という姿はジャズのインプロヴィゼーションと同じですし、音楽を通してより良い人間になろうという心構えもあります。師と愚者は自分の中に存在するもの。自分を磨き師の姿に近寄ろうとしながら生まれ持った愚者的な無邪気な奔放さを無くさないようにしたいと思います。僕はまだまだですね...。(笑)でもいつもこのような姿勢でバークリーで教えています。


JT:それでは最後に夢を教えて下さい。

大越:砂漠で見つけたオアシスの水の様な音楽を作りたい。そして、いつかトランペットが楽しくなる時が来るのではと感じつつ...。






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FIVE by FIVE 注目の新譜

NEW5.06 '13

FIVE by FIVE
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COLUMN
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