# 333 |
シュテファン・モェラー ピアノ・リサイタル |
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シュテファン・モェラー(Stefan Moeller) pf |
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シュテファン・モェラー(Stefan Moeller)。地味な存在のピアニストではある。1955年
ハンブルク生まれ、ドイツ国内およびザルツブルク・モーツァルテウム音楽院で研鑽を積み、1983〜85年のザルツブルグ音楽祭ではカラヤンの助手も務めたこともあるという実力派。現在もウィーンに住み、ウィーン国際ピアニスト協会会長、オーストリア音楽協会理事も務めているという。この日は 、ベートーヴェンの交響曲第9番(リスト編曲)を引っ提げての公演である。先の大震災で来日アーティストの来日キャンセルが続く中、まだまだ不安な空気が濃厚に立ち込めていた4月半ばに予定通り演奏を決行する雄姿にまず快哉を叫びたい。プログラムが「歓喜へ寄す」で有名な交響曲であり、シラーによる楽曲のテーマ「人類はすべて兄弟である」にプログラム冒頭で言及し、強い哀悼の意を述べている。 |
前述のとおり、第一楽章と第二楽章ではオーケストラの勢いやグルーヴの表現に聴き手の関心は向ったが、緩徐楽章と「歓喜へ寄す」を含む最終楽章において、モェラー本人が持つ音色美と対位法を活かしきった構成力が渾然一体となった、なかなかに色彩感覚豊かな世界が現出されていたといえる。そのキャリアから伝統的なジャーマン・ピアニズムの継承者であることが窺えるが、ショパンやドビュッシーといった外向的な華やかさや繊細な音のスライドというよりは、まず太い響きの幹が打ち建てられ、その内部に様々なくぐもりの反射を見るかのような内向的なロマンティシズムがしっくりと来る。ベートーヴェンの他に、シューマンやブラームスを聴きたいと思わせる。この日のとりわけ後半の楽章においては、表層は決して派手ではないが実はその内部に様々なニュアンスを併せ持つ音色の奥行き、或いは「鳴らし」自体は非常にシンプルでありながら、楽器の素朴な材質感をストレートに感じさせる瞬間が多々あった。例えば、ハンマーの響振が複数に折り重なったとき、そのてんでばらばらのハンマーの戻りが生む想定外のムーヴメントの楽しさ。入念な対位法の弾き分けが図らずも含んでしまう、厚みも色も異なる音の葉の連なり。それらは多重録音にも似た現代性を生みはしまいか。そういった残響や間合いを楽しむのに、やはり緩徐楽章が適していたということである。 |
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