Concert Report#428 |
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン/熱狂の日音楽祭2012 |
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東京では2005年に始まった音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」(熱狂の日)には、今年もまたまた驚かされた。音楽祭としての規模といい、意表を突く型破りなプログラム構成といい、海外と国内とを問わない多彩な演奏家の顔ぶれ等々、催しそれ自体がクラシック音楽ファンの関心をくすぐらずにはおかない。それかあらぬか、今年は突出してというべきか、私がのぞいたコンサートに限っていえば、どの会場も見まごうほどの盛況ぶりだった。 |
ラルームの演奏が新劇の舞台を彷彿とさせるとすれば、デルジャヴィナのスクリャービンはメトネルやプロコフィエフ同様に絵画的で、ラルームと比較すると色彩美が印象深く、ときに物語を朗読するような語り口も光る。彼女は熱心な拍手に応えてバッハの「ゴルトベルク変奏曲」のテーマを弾いて締めくくった。 |
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翌日(4日)は小曽根とパリ室内管の共演によるショスタコーヴィチのピアノ・コンチェルト。この協奏曲はトランペットがソロイストで活躍する異色の作品である。私自身も過去に2度日本のオケとの共演で小曽根真を聴いているが、ことにセルゲイ・ナカリャコフのトランペットと共演した鮮度の高い演奏が強く印象にあった。歴史はさほど古くないが、パリ室内管はさすがに洗練されたアンサンブルで魅了する。音がシックで柔らかい。米国出身の指揮者ジョセフ・スヴェンソンの的を外さない的確なタクトのもと、いかにもヨーロッパらしい肌触りの心地よいアンサンブルを響かせた。バレェ音楽と聴きまごうような演奏のプロコフィエフの古典交響曲に続いて、軽装の小曽根が登場。この祭典では初めてヤマハのグランド・ピアノが鳴るのを目にした。小曽根のショスタコーヴィチはめりはりが実に鮮明。もともと優れた曲だとは思うが、小曽根の確信に満ちた演奏で聴くと、たとえばプロコフィエフの3番やハチャトリアンと並ぶ名品に聴こえる。3つの楽章の性格を的確にとらえ、その違いが浮き彫りされるような小曽根のアプローチに圧倒された。とにかく、こんなに音楽を楽しみながら、嬉々として演奏するピアニストはほかにいないのではないかと思いたくなるくらいに気持がいい。めりはりが明快なだけに3つの楽章はそれぞれに印象深いのだが、とくにラメントを聴くような第2楽章の呟くようなリリシズムが胸に沁みる。繊細なオケのアンサンブルがよくマッチする。それと第3楽章のカデンツァ。冒頭のカデンツァ風提示と、優美なストリングスがピアノをけしかけるかのような展開部、さらにトランペットのソロが絡んでピアノとオケの3者の三つどもえとなる急展開の迫力に花を添えたのが、小曽根のアイディアと創意で聴く者を釘付けにした最後のカデンツァ。この巨大なホールを埋めた大聴衆が固唾を呑むように凝視している緊張感が伝わってくる。ジャズ的な演奏を盛り込むといった安易なアプローチではなく、リズムや主題に基づくパッセージが即興的な活力に満ち満ちているところが素晴らしいのだ。これほどの成果をあげた上に、クラシック音楽ファンの注目の的になると、ジャズ音楽家としての小曽根真はいったいどうなるのか。いささか心配になってきた。(2012年5月8日記) |
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