Live Report#436

JapzItaly〜Jazz Aid for Japanese Children
2012年5月25日 @Istituto Ettore Conti
2012年5月27日 @Centro Congressi Corridoni
Reported by 堂満尚樹 (Naoki Domitsu)
Photos by シルヴィア・テネンチ(Silvia Tenenti)

2012年5月25日@Istituto Ettore Conti

須藤伸義(p)
藤原清登(b)
トマーゾ・カッペラート(ds)

アンドレア・ツェンタッツォ(perc-solo)

アンドレア・ツェンタッツォ(perc)
坂田 明(as)
藤原清登(b)


2012年5月27日@Centro Congressi Corridoni

渡辺貞夫(as)
タイガー・大越(tp,flgh)
小野塚 晃(p)
ルカ・ピッサヴィーニ(b)
トマーゾ・カッペラート(ds)

G2us(高谷秀司g+マサ大家g)
石塚まみ(p, vo)
大由鬼山(尺八)
ルカ・ピッサヴィーニ(b)
トマーゾ・カッペラート(ds)

行徳哲男(書)
坂田 明(as)
大由鬼山(尺八)
ロベルト・ゾルジ(g)

 ミラノに暮らす女流写真家、シルヴィアとともにコンサートに出掛けた。これからコンサートがはじまるとは到底思えない何だか古い集会場のようなところが今夜の舞台となる。ファッションの発信地ミラノにありながらかなり地味な雰囲気であり、200ほどの客席にはパイプ椅子が整然と並べられている。近くに、サンシーロ(ミラノのサッカー・スタジアム)があるくらいだから街の中心からもかなり離れているのであろう。
 JapzItalyという催しは、日伊ジャズ界の著名アーティストがミラノに結集しながら、東日本大震災のチャリティに努めようというもの。世界的パーカッショニスト、アンドレア・チェンタッツォの発案を受けたイタリア人ギターリスト、ロベルト・ゾルジがサンディエゴ在住の心理学者/ピアニスト須藤伸義を経由して企画を日本に持ち込み実現に漕ぎつけた。ミラノ県が主催となり、5月末、3夜連続のコンサートが実現している。
 コンサートに向かうきっかけとなったのは、在ミラノ日本国総領事館からの達しを受けてのこと。後援にあたった総領事館が出演アーティストを総領事公邸に招き催されたレセプションにシルヴィアとともに招待されたからである。
 25日、昼食時に行われたレセプションにはほとんどのコンサート出演者が揃った。錚々たるメンバーである。ナベサダ(渡辺貞夫)がいる。坂田明がいる。タイガー大越がいる。藤原清登がいる。チェンタッツォがいる。ジャズ門外漢の自分ながら知った顔があちらこちらにある。自然体のビッグ・アーティストたちを見て身震いすると同時に身体全体が熱くなる、そのようなシチュエーションなのだ。最初は日伊交えての歓談、その後、主催、後援が挨拶に上り、引き続きその場で生演奏を聴けるという。ピアノを横にサックスを奏ではじめたのはナベサダである。深く、しかし澄んだ音色はやはり心地よい。安心して浸れる音楽がそこにある。オペラ、「ナブッコ」の中からイタリアの国歌にも等しい「行け、わが思いよ、黄金の翼にのって」の演奏には周りのイタリア人も大喜びだ。イタリア人であれば我もいかんと声高らかに歌い上げるところなのだがその日は美しいイタリア語幹のように歌うサックスの音色に聞き惚れるあまり合唱には至らない。その後、二組のアーティストの演奏が続くと夜の本公演が控えていることもありメンバーは帰路についていった。
 3夜連続のコンサート、なぜか会場すべてが異なるという異例の事態となる。しかもそのすべてが世界的なアーティストを招くホールとは到底思えぬようなアーティスティックな色も雰囲気もないただの箱なのである。冒頭でも書かれているように。
 初日の開演15分前、わたしは席に腰を下ろしシルヴィアは撮影の準備に取り掛かっている。見回すまでもなく観客がいないことがわかる。僅か10名ほどか。まだ時間はあると少しでも席が埋まるように祈る。最初の音が鳴る。トリオである。藤原清登しか知らない。音楽よりも大きなベースを抱えて雰囲気を漂わせている風貌に見とれてしまっている。しばらくすると関心がピアニストに移っていることに気付く。大型の青年は体を丸くピアノに対峙するかのように音楽を紡いでいる。演奏に上手さや小器用さはまったく感じない。どちらかといえば不器用な方だろう。しかし味がある。ハートがあるという言い方は必ずしも相応しくないだろうがメロディの奏で方やとくに同じパッセージのつづく平坦であろう部分に均一ではない揺らぎを感じる、ヒューマンがそこにある。トッマーゾ・カッペーラートの刻むリズムが果たしてアンサンブルとして最適かどうかは判断しかねるが、藤原とのコンビは抜群である。聴いていて心地よい。体に染み込んでくる音楽なのである。青年の名を須藤伸義(Nobu Stowe)という。のちにかなり活躍しているミュージシャンと知って頭を掻くも気持ちよい音をつくるアーティストと巡り会えた喜びはひとしおである。つづくチェンタッツォのパーカッションにも度肝を抜かれる。舞台に置かれた数多くのドラムを見たときこれ見よがしの配列だなとほくそ笑んだものの、実際、演奏をはじめたらその集中力と完成度の高さには舌を巻いてしまう。カメラマンのシルヴィア自身、結構、気難しい人間で、被写体そのものがつまらなければそそくさと機材抱えて去っていく真の芸術家肌ながら、しかし初日終了後に、無償で構わないから残る二日のコンサートも撮らせてほしいと自分から申し出てきた。それほど濃い内容だったのである。
 27日の最終日、ナベサダ、タイガー大越が舞台に上がるとあってこの日は立ち見が出るであろうと予想するも500のキャパ、座席についているのは40人足らずだろうか?これは一体どうなっているのだ。主催のミラノ県は何をしていた。時間を持ち寄ってイタリアまではるばる渡ってきたアーティストたちに何をしてあげたのであろう。杜撰な状況に憤りながらコンサートがはじまる。ナベサダ、タイガー大越、そしてピアニスト、小野塚晃のセッションは安心して聴くことができる。驚きがあるわけではないがそれぞれのプロの技にはジワジワと高揚していく。ドラムスのイタリア人、クリスティアーノ・ヴァイラーティの音がなんとも心地よい。ここにまた完成度の高いアーティストを見つけている。このコンサートのハイライトは何といっても坂田明と尺八の大由鬼山のフリージャズのセッションだろう。坂田明は欧州でも評価されているとすでに知っていた。サックスだけではなく魂の叫びのような声もライブで聴くと鳥肌ものである。そこに鬼山の尺八である。邦楽的な響と洋楽的な響を自在に使い分け、はたまた互いの分量値を緻密にコントロールする奏法はこれまで聞いたことがなくかなり興奮させられてしまう。周りに伝える「音楽」の認識がかなり変わったような気がしている。
 最後に客席の状況を知りながらも最高のパフォーマンスをつづけてくれたアーティストたちに今一度ありがとうと言いたい。シルヴィアの思いを込めたスナップから最高のパフォーマンスを聴きとることができるだろう。(音楽ジャーナリスト/在ミラノ)

@公式レセプション
http://www.milano.it.emb-japan.go.jp/page4_partecipazioni.html#japzitaly

@Istituto Ettore Conti
http://www.youtube.com/watch?v=eiea4GOp0ss
http://www.youtube.com/watch?v=Tk1oLD09GtU&feature=relmfu

@Centro Congressi Corridoni
http://www.youtube.com/watch?v=X29wHEjck4M&feature=relmfu
http://www.youtube.com/watch?v=OeR5m9qElWM&feature=relmfu
http://www.youtube.com/watch?v=4p3Gpikeml8&feature=relmfu
http://www.youtube.com/watch?v=OsTmYaqyzJ8&feature=relmfu
http://www.youtube.com/watch?v=W1A22l76XBQ&feature=relmfu
http://www.youtube.com/watch?v=uCVlLBwpCC4&feature=relmfu  

















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