『Baldo Martínez - Projecto Miño』

Karonte Records (KAR 7802)

Baldo Martínez − double-bass, composition, direction
Maite Dono − vocal
Alejandro Perez − tenor & soprano saxes, clarinet
David Herrington − trumpet
Chiaki Mawatari − tuba and serpent
Antonio Bravo − guitars
German Díaz − hurdy-gurdy
Pedro Lopez − drums, African percussions
Carlos Castro − vibraphone, derbuka, congas, djembe, various percussions

Special Guest: Valentin Clastrier − hurdy-gurdy

“O Riveira” (tradicional)/ “Marcha de Guimaraes” (Martínez)/ “Aire de tuba” (Martínez)/ “Canta a rula” (tradicional)/ “De onte para mañan” (Martínez)/ “Suite del Miño” (Martínez)/ “De Norte a Sur + Au fond des temps” (Baldo Martínez + Valentin Clastrier)/ “Fogar de Breogan” (Pascual Veiga)

Recoded between November 2006 and March 2007
Recorded @ Infinity Studios (Madrid)
Recording, Mixing & Mastering Engineer: Pablo Baselga
Produced by Baldo Martínez
筆者が、2008年のベストに選んだのは、スペイン市民戦争時代の大衆歌をギターとハーディー・ガーディーで見事ジャズ化させた『MUSICAS POPULARES DE LA GUERRA CIVIL』(Nube Records)。(注)その作品の立役者、アントニオ・ブラボgとジェルマン・ディアスhardy-gurdyが参加しているのが、バルド・マルチネスbのグループ『プロジェクト・ミーニョ』。
マルチネスは、ポルトガルの北部に隣接するガリシア地方(スペイン)出身のベーシスト。彼の活動歴は長く、自身のリーダー・プロジェクト“Baldo Marti´nez Group”や“Zona Acustica”の他、イタリア人リード奏者のカルロ・アクティス・ダートとのデュオや、ヨアヒム・キューンのトリオへの参加等、幅広い活動を続けているスペインのトップ・ベース奏者。ガリシア地方の中心都市のビーゴで、毎年6月に開催される“Imaxinasons Jazz Festival”(www.imaxinasons.com)の芸術監督も努めている。
グループ名の由来は、ガリシア地方に源を発し、スペイン=ポルトガル国境を形成して大西洋に注ぐ“ミーニョ川”。マルチネスが、ポルトガルの“Guimaraes International Jazz Festival”の要請で、ミーニョ川流域の音楽・文化をジャズに昇華すべく結成された。ヨーロッパ各地での公演を重ねた後にリリースされたのが、本アルバム『Projecto Miño』。スペインのCuadernos de Jazz誌の年間最優秀作品(2008年)のみならず、フランスのJazz Magazine誌他の雑誌で何れも高評価を得た事実からも分かるように、非常に水準の高い作品だ。
ジャズをベースに、ガリシア地方の民謡を基本にしたスペインからアラブに跨る凡地中海音楽や、アヴァンガルド等の多種の音楽形態を、破綻無くまとめ上げた編曲能力は、見事。作曲と即興のバランス感覚も文句無い。個人的には、プログレッシブ・ロック、特にカンタベリー派からの影響も聞き取れる気がした。いずれ直接確認してみたい。しかし、哀愁漂うガリシア民謡、パルマード(手拍子)やフラメンコ的なリズム解釈等、異国情緒たっぷりの音楽のオリジナル性は高い。
素晴らしいのは“頭でっかち”な学術的実験で終らず、純粋に音楽として楽しめる事だ。これは、数曲の題材に起用されたトラディショナル曲に代表される印象的な旋律を、作/編曲の屋台骨に使っている事に起因すると思う。アルバート・アイラーの『スピリチュアル・ユニティ』(EST:1964年作品)や、チャーリー・ヘイデンの『リべレーション・ミュージック』(Impulse!:1969年作品)を聞いても分かるように、“歌心”を忘れない“前衛”は、説得力が殊更強いと感じる。勿論、参加ミュージシャンの力量が、本作品の成功に大きく寄与している事実は、言うまでもない。
プロジェクト・ミーニョには、多様な楽器編成の、総勢10人のミュージシャンが参加。何れのミュージシャンも、アンサンブルとソロの両方に輝きを感じさせるプレイを披露しているが、特に印象に残るのは、前述のブラボとディアスのギターとハーディー・ガーディーの他、重厚かつしなやかなマルチネスのベース、スペインで活動している日本人ミュージシャン=チアキ・マタワリのサーペントの牧歌的な響き、トラッドから前衛まで多彩な表情を見せる、マイテ・ドノのヴォーカルだ。ドノは、アヴァンガルド歌手の最高峰=AREA(イタリア)のデメトリオ・ストラトスを彷彿とさせる、変幻自在な素晴らしい歌唱を披露している。この手のヴォーカリストに有り勝ちな“陳腐さ”が無いのは、古典的な唱法を確実に、モノにしているからだろう。彼女は、リーダー作を数作品(ポップ寄りの作品も含む)をリリースしている。
是非、JT誌の読者に聞いてみて欲しい素晴らしい作品なのであるが、残念ながら日本では、手に入り難い模様。アマゾン、タワー、HMVで調べて見たが、見つかりませんでした。因みに、マルチネスやドノの他の作品は、数作は入手可。本レビューが、日本でのディストリビュートのきっかけに成なる事を祈る。JT

(Nobu Stow/須藤伸義)

注:http://jazztokyo.com/best_cd_2008
/int14.html

メンバーのホームページ:

Baldo Martínez
(www.baldomartinez.com)
(www.myspace.com/baldomartinez)
Antonio Bravo
(www.myspace.com/antoniobravo)
David Herrington
www.myspace.com/dayverinton
Antonio Bravo
(www.myspace.com/antoniobravo)

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